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アクティブ・ラーニング:教員コラム 第5回/プロジェクトを通じての学びとその意義(早田吉伸)

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アクティブ・ラーニングの一つとして、プロジェクト学習(PBL=Project-based Learning)(1) がある。今回は、このプロジェクト学習の意義を皆さんと共有してみたい。プロジェクト学習とは、実世界に関する解決すべき複雑な問題や問い、仮説を、プロジェクトとして解決・検証していく学習のことである。学生の自己主導型の学習デザイン、教師のファシリテーションのもと、問題や問い、仮説などの立て方、問題解決に関する思考力や協働学習等の能力や態度を身につけるものである(溝上2016)。このプロジェクト学習(PBL)は、科目進行型学習(SBL=Subject-based Learning)と対比して説明されることが多い。SBLとは、いわゆる従来の教育方法で、暗記型の学習スタイルと言われるものである。基礎から応用へと順番に進んでいき、導き出される1つの回答を目指して取り組む学習方法といえる。SBLと比較するとPBLの方が、学習者がより能動的に学習へ取り組める仕組みとなっているため、学習者の主体性を発揮しやすい学習方法と言われている。

 

こうしたプロジェクト学習には大きく2つのやり方がある。一つ目がチュートリアル型で二つ目が実践体験型である。チュートリアル型とは、提示された事例をもとにグループワークを行い、事例の中から問題点を見つけ出し、解決策を導き出すものである。一方、実践体験型は、民間企業や行政機関等と連携して、実社会のリアルに触れながら問題点を見つけだし、解決策を創出するものである。チュートリアル型の方が取り組みやすく、実践体験型は関係者との調整等の環境構築に工数がかかり取り組みにくいと言われているが、実践力を身につける上では、実践体験型の方が優れている。そのため、本学のPBLでは、卒業までに3回の実践体験型のプロジェクト学習の機会(課題解決演習IA、I B、Ⅱ)を提供することで、実践力を身につけて頂きたいと考えている。

 

さて、ここまで、プロジェクト学習の意義や有用性について述べてきたが、そもそもプロジェクト(project)とは何だろうか。Project Management Instituteが制定しているPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の定義では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」とされている。言い換えると、プロジェクトとは、何らかの目的を達成するための計画(企画)とそれを遂行する手段やプロセスとして必要になる様々な資本のことだと言える。多くの人は社会人になると、何らかの組織に属し、その中でプロジェクトに参加することになる。プロジェクトを通して成果を出すことで報酬を得るとともに、プロジェクトを通して、学習し、成長することになる。実際、自分自身を振り返ってもそうだったと言える。今後、デジタル化が進展し、人と組織の関係が変わっていくと、組織の求心力が衰え、個人がプロジェクトを通じて繋がっていく世の中になると言われている。つまり、組織ベースの働き方からプロジェクトベースの働き方に変わっていくことになる。そうなると、プロジェクトで成果を出しながら、同時に学習していける力が、今以上に個人に求められるようになる。これからの社会に適応していくためには、プロジェクトベースで物事を捉え、行動していける力こそが、基本的なコンピテンシー(2) になるはずだ。

 

本学のPBLを通じて、学生の皆さんには、これからの社会を主体的に生き抜く実践力を身につけてほしい。そのための環境として、私たちは広島を中心に県内外の多様なステークホルダー(3) と関係性を構築しているところだ。皆さんがこの環境を十分に楽しみながら活用し、成長していくことを心から期待している。また、その結果、この広島を起点に社会イノベーションが起こることを楽しみにしている。

 

  1. 類似のものとして、問題解決学習(PBL=Problem -based Learning)がある。溝上(2016)は、問題解決学習を、実世界で直面する問題やシナリオの解決を通して、基礎と実世界を繋ぐ知識の習得、問題解決に関する能力や態度等をつける学習と定義した上で、プロジェクト学習との共通点について、(1)実世界の問題解決に取り組む、(2)問題解決力を育てる、(3)解答は一つとは限らない、(4)自己主導型学習を行う、(5)協働型学習を行う、(6)構成的アプローチをとる、の6点を指摘している。また、両者の違いとして、問題解決学習は、今現場や社会で起こっている問題を与えられての解決学習であることが多いが、プロジェクト学習は、未来に向かっての社会的な課題解決の学習であることが多い点等を指摘している。なお、前述(6)についてであるが、2つの構成的アプローチが採られることになる。一つは知識構成であり、学生が持つ既有の知識や経験、素朴な考え等を、問題解決の中で学習することに繋げて、自身の知識正解を構成的に発展させること。もう一つは社会的構成であり、他者や集団の理解や考え等を取り込んで、自身の知識世界を社会構成的に発展させることである。
  2. 企業においては、行動特性・態度(優秀な成果を発揮しているハイパフォーマーの行動特性や態度)を意味することがあるが、ここでは、スキルや態度を含んだ人間の全体的な資質・能力のことを示している。叡啓大学では、コンピテンシーとして、「先見性」「戦略性」「実行力」「自己研鑽力」「グローバル・コラボレーション力」の5つを定めている。
  3. 利害関係者のこと。県内外の民間企業、行政機関、NPO/NGO、国際機関等の団体をはじめ、教育機関(高校、大学等)の幅広い関係者を指す。

 

【参考文献】
Project Management Institute(2018)“A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide)–Sixth Edition (JAPANESE)”
溝上慎一(2016)「アクティブラーニングとしてのPB L・探究的な学習の理論」溝上慎一・成田秀夫(編)『アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習』東信堂