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アクティブ・ラーニング:教員コラム 第1回/ アクティブ・ラーニング好事例取り組みをアイスブレークする(保井俊之)

  • # アクティブ・ラーニング
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叡啓大学では、全科目で一方的な座学を20%程度に概ね留めるという目安で、全科目アクティブ・ラーニングを実行することにしている。これが、他の大学と叡啓大学が際立って違う22世紀型大学を標榜する所以だ。他方で、新しいことを何か始めようとすると緊張や困難が際立つものだ。なので、これから高い山に登ろうとするわれわれ叡啓大学の教員にとって、まずはできること、やっていることで良い事例を集めていきましょう、というお誘いのために、アクティブ・ラーニングの好取組事例をアイスブレークさせていただきたい。
そんなに身構える必要はない。学生とのインタラクションが講義の中にあり、学生が自分から学びの姿勢になるのであれば流儀は問わない、というのを叡啓大学スタイルのアクティブ・ラーニングの出発点としたいとわたくしは思う。そして好取組事例のわたくしからのtwo centsとして、次の二つの事例を共有したい。

1. 半学半教タイム

まずは「半学半教」タイムだ。「半学半教」というのは慶應義塾の創設者・福澤諭吉の言葉で、教員学生問わず、少し前に進んで学問を先駆けている者が残りの者に教え、問答を行って教員と学生が同時にその先駆けの学問を反芻するという意味である。明治時代も後半になり旧制高校及び大学の教育制度が日本で確立されると、専門の学問は教員がもっぱら教えるべし、学生に教えさせるとはもってのほか、という理由で、この「半学半教」は廃れてしまう。しかし、今のわれわれの状況を顧みると、この「半学半教タイム」はとても役立つかもしれない。 ソーシャルシステムデザインという新しい学問をアクティブ・ラーニングで教えるのだから、ひょっとしたら学生のほうが教員より良く勉強が進んでいるかもしれないからだ。
そこで、毎回希望者を募り、授業の冒頭10分間程度を「半学半教タイム」として、学生に自分が半歩進んでいることを教えてもらったらどうだろう。アメリカの小学校でよく実施されている“show and tell”の大学版というと想像が容易かもしれない。
わたくしの10年間強の社会システムの授業経験では、この「半学半教タイム」はすこぶる評判が良かった。教えた学生も教えられた学生にも、何よりも学びになったというフィードバックが得られている。「教員が学生たちから教わるなんて」などと実施に躊躇することはない。アクティブ・ラーニングとは、ありきたりの知を座っている学生に説教することではなく、自ら知を探す方法を学生たちに伝授することだと観念すればよいからだ。「魚を与えるのではなく、魚を釣る方法を会得してもらいなさい」はエンパワメントの基本原則である。

2. マシュマロ・チャレンジ

もうひとつの事例は、集合知を得ることの難しさを学生たちに体感してもらうアイスブレークだ。われわれは集合知、協働、協創、グループ学習、並びにワークショップなどのキーワードでグループでの学習の意義を語り、学生たちにその実行を慫慂する。他方で、グループで「文殊の知恵」を集めることは、意外に実行プロセスとしては難しいということは、実行する当の学生はあまりピンとこないものだ。
そんなときに、集合知を集め、何かの目標を達成することの難しさを「マシュマロ・チャレンジ」で学生たちに体感してもらうのはいかがだろうか。マシュマロ・チャレンジとは、4~6人一組のチームを作り、各チームに配られた紙袋の入っている、スパゲティ20本、テープ1ヤード(=91.4cm)、紙ひも1ヤード(=91.4cm)、並びにマシュマロ1個を使い、18分間の制限時間以内に、机の上に一番高いタワーを作ったチームが優勝者というゲームだ。企業のエンジニア教育の最初のアイスブレークに使われることが多いが、高校や大学などでもたくさん実施されていて、何十万人というひとたちが世界中で実施している、能動型で集合知を集めることの難しさ、チームアップのチャレンジ、そして目標達成のための手順合意の難度の高さを体感してもらうプログラムである。詳しくはThe Wujec Group Inc. のThe Marshmallow Challenge Website*などを参照されたい。
次回のわたくしの担当コラムでは、ワールド・カフェなどアクティブ・ラーニングに役だつホームシステムアプローチのワークショップツールを紹介したい。