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アクティブ・ラーニング:教員コラム 第4回/オンラインでアクティブ・ラーニングをやってみた(粥川準二)

  • # アクティブ・ラーニング
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筆者は2019年度と2020年度、他大学で「社会調査論」(主に3年生対象)と「社会学概論」(主に2年生対象)という科目を担当しました。2019年度の結果は散々でした(どう「散々」だったのかは省略)。

 

悩んだ末、2020年度には、アクティブ・ラーニングを全面的に取り入れることを決意しました。そこに突然やってきたのが新型コロナでした。そのため筆者は、オンライン授業も同時に試みることを余儀なくされました。しかも前期の担当科目はよりによって「社会調査論」です。

 

「社会調査なんて、オンラインで教えられるわけないだろ。コロナ禍でフィールドワークもできないし…」と思ったのですが、すぐに考えを改めました。「僕らはいま、日常的に“フィールド”にいるようなものでは? いましかできない社会調査もあるのでは?」と。

 

そんなわけでオンラインでのアクティブ・ラーニングを試みたのですが、その結果をひと言でいえば、予想以上にうまくいきました。

 

プラットフォームはMS Teamsを使い、MS Formsと連動させました。授業は「リアルタイム」で実施しました(筆者は「オンデマンド」の利点を思いつきませんでした)。テキストは、前期の社会調査論では、『最強の社会調査入門』(前田拓也ほか編、ナカニシヤ出版、2016年)を、後期の社会学概論では『社会学入門』(筒井淳也ほか著、有斐閣、2017年)を使用しました。

 

手順を示してみます。まず事前学習課題としてテキストの熟読とミニレポートの提出を課しました。授業中には、課題に基づくクイズ(小テスト)と、それに付随するグループディスカッションや口頭発表を行いました。事後学習課題では記述式の問題やアンケートに答えさせました。いずれも、MS Teamsの「課題」や、「チャネル」での「会議」、そしてMS Formsを駆使しました。期末レポートも「課題」を使って指示しました。

 

また叡啓大学は、一方向的な講義を20%以下にすることを目指していますが、この2科目においてはほぼ0%でした(もちろん学生の口頭発表に対するコメントなど、「双方的な講義」はかなり行いましたが)。

 

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という格言がありますが、筆者は学生たちに魚の釣り方を教えることしかしませんでした。学生たちは自分で釣った魚を食べたのです。いうまでもなく、「魚」とは知識のことです。

 

では、その学習効果は? 劇的にありました。最初の頃にはテキストの読解も文章もおぼつかなかった学生が、回を重ねるにつれて上達し、とてもいいミニレポートを提出するようになりました。たとえば社会調査論を受講していた留学生は、最後には日本人学生と同等の日本語を書けるようになりました。その過程で多くの知識やスキルを得たはずです。グループディスカッションも最初はギクシャクとしていましたが、すぐにスムーズになりました。

 

期末レポートも、個人差はあるものの、フィードバックと再提出を3〜4回重ねるうちに、そのほとんどがかなりいいものになりました。社会調査論では、調査範囲を広げて考察を深めれば、卒業論文になりそうなものもありました。社会学概論では、ちょっとした書評論文のようなものもありました。実際どちらの科目でも、最後まで残った学生たちのほとんどがきわめて高い評価を得ました。講義の割合が多かった2019年度よりもかなりよくなりました。

 

学生たちの感想も悪くありませんでした。ある学生は「この授業を受けて学んだことを他の授業のレポートで意識して書いたら、今まではとれなかったA+をとることもできました」と筆者に伝えてくれました。教師冥利に尽きます。

 

ただし反省点もあります。第一に、脱落者が多すぎたこと。どちらの科目でも3分の2の学生が履修辞退しました。どうやらこの大学のこの学部では、課題もグループディスカッションもあまり多くないらしい。そのため筆者の担当科目は学生たちにとって負担の重いものとみなされたようです。

 

第二に、高コストすぎたこと。クイズ作成などの準備や課題のフィードバックなどのアフターケアには毎週8〜10時間かかりました。たまたま担当科目が週に1つだけで、しかも受講生が少なかったので可能でした。担当科目数や受講生が多かったら、この方法は実施できなかったかもしれません。

 

以上、個人的なアクティブ・ラーニング経験を振り返りました。ある研究では、STEM(科学・技術・工学・数学)においては、アクティブ・ラーニングは「伝統的な講義」よりも、成績をはるかに向上させられると報告されています(Freeman, S., et al. "Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics." Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 111, no. 23, 2014, pp. 8410-8415)。筆者が教えた科目はどちらも社会科学ですが、この知見を裏付けているように思われます。

 

少なくとも筆者は今後、「講義」をする気はまったくありません。